ポメロイの山々

コロナ禍の中で勘緑さんが古謝美佐子の曲で踊ってくれる文楽人形シリーズもついに自宅屋上を飛び出して市外へ。今回はアイルランドの「ポメロイの山々」。
下の映像は奈良と大阪にまたがる「生駒の山々」です。
前回の「1945の春」からはレクイエムつながりということで、今は亡き愛する人を想い初夏の山あいを駆け巡り行くような人形の情念の踊りが素晴らしいです。なお勘緑さん一行はこの日、小さい二人の子供連れで女性二人はジーパン姿で失礼しています。

このアイルランド民謡を古謝美佐子が歌うようになったのは2001年にアイルランドのチーフタンズの日本公演ゲストとして古謝美佐子に出演依頼があったから。この時、沖縄の曲以外にできればアイルランドの民謡を共演をお願いしたいと思い、選んだのがこの曲でした。

原曲の歌詞は戦争にまつわる男女の悲しい物語ですが、訳詞は少し希望のある感じの沖縄口にし自然と共に生きるアイルランドと沖縄の共通の心も組み込みました。

アイルランドも沖縄もご存知の通りの小さな島国ですから、アイルランドはイギリス、沖縄は日本や中国といった大国に昔から〜今日に至るまでも翻弄され差別され利用されてきた苦難の歴史がとてもよく似ています。
歴史以外にもアイルランドのケルト文化と琉球文化には、自然と共生しそして循環円環していくという共通項が根底に流れていて、例えば音楽でも同じフレーズやリズムを延々と繰り返して循環していく構造があります。
そしてなにより双方とも人々が底抜けに明るく、特に音楽が大好きで盛んで、歌を歌い楽器を奏でているとき人々は実に楽しそうに歌い踊っているところなどが実に似ていると思います。お互い庶民の生活は苦しいのにね。

この古謝美佐子のCDテイクではアイルランドと同じケルト文化を持つスペインのガリシア地方の素晴らしいカルロス・ヌニェスとシュルショ・ヌニェス兄弟が参加してくれています。特に間奏などで名人カルロスが吹く笛〜ホイッスルは圧巻です。

というわけで「ポメロイの山々」は我々の大事なレパートリーとなり、ソロの公演では必ずセットリストに上げているほどです。

2020.8.4 記

「1945の春」

勘緑さんのモノクロ動画つながりでうないぐみ「1945の春」を。
今日6月23日前後は毎年、沖縄戦の追悼公演に出演してきましたが今年は自粛中止なので、代わりに動画で人形とともに慰霊追悼いたしましょう。
しかし1945年の沖縄地上戦と今年の新型コロナ感染の状況は3月頃に始まって夏前まで続くという時期がぴったりで、、もちろん戦争とコロナは全然違うけれど、、。
沖縄では一応6月23日に日本軍司令部の自決で組織的戦闘が終わった、ということで慰霊の日として戦後に後付けされているだけで、当時はもちろんこの日に「戦争終わりました」などという発表があったわけでも何でもなく、このあともあちらこちらで散発的な戦闘は続いていたし、8月15日に終戦したことを知った島民も少なかったのではないだろうか。
元沖縄県知事の太田昌秀氏は当時20歳で鉄血勤皇隊として軍に配属され戦禍の中、幸運にも九死に一生を得るがその敗戦を知ったのはこの年の9月で、道端に落ちていたアメリカの新聞の見出しを見てわかったという。

新型コロナもこの日に「終わりました」などという宣言があることも無くこのままの状況が当分続き、そのうちいつのまにか終わっていた、ということになるのだろうか。

ただ忘れてならないのは、厚生労働省国立感染症研究所の前身は戦前の日本陸軍731部隊であり、この部隊は戦前から戦中にかけ密かに人体実験による生物兵器開発を行っていたのだが、現在もその秘密主義、自前主義の傾向が残っていて大事な情報を隠蔽し独占しようとする体質が当時とあまり変わっていないように思えてならない。

2020.6.23 記

「ふたつの橋ものがたり」

「ふたつ」つながりで。下記はまたまた勘緑さんがコロナ自粛中に自宅屋上でパフォーマンスしてくれた動画で、古謝美佐子の「恨む比謝橋」と「天架きる橋」の橋繋がりの2曲。
前半の「恨む比謝橋」は1600年代に実在した沖縄の女流歌人「吉屋チルー」作の琉歌をもとにした曲.。
チルーはわずか7~8歳の若さで生まれ故郷の恩納村から那覇の遊郭に売られるその道中で、途中に掛けられているこの比謝橋さえなければ私は遊郭に売られずに済んだのに、と我が身の運命を嘆く恨みの琉歌が1番。
2番は那覇の遊郭から故郷を想い、3番は死期が近くなったことを悟る琉歌。
最後の4番はチルーが若くして病死した直後にどこからともなく聞こえてきた、という歌。
このパフォーマンスは「古謝勘」人形ユニットのオリジナル作品「吉屋チルー物語」の中の挿入歌でもある。
今は国道58号線で読谷村と嘉手納町を結ぶこの比謝橋のほとりには、1番の琉歌の歌碑が建っている。昔はこの動画にあるように木製の橋であったはずだが、今はもちろん立派な鉄骨の橋となっている。
ただ、その下を流れる比謝川の水は、昔は綺麗だったはずだが、しかし現在の川はひどく淀んで濁っていて、嘉手納生まれの古謝美佐子は生まれてからこの方「この川が澄んでいるところを一度も見たことがない」と話している。それは何故か。この川上には嘉手納米軍基地があり、米軍は基地の汚染物を好き放題に垂れ流しにしているからだ。
戦後〜最近までの沖縄県の白血病の発症率は全国でも最上位に位置する。
2020.6,22 記

「ふたつの黒い雨」

「黒い雨」つながりでもう一つ。こちらは15年前の2005年に発売された「ふたつの黒い雨」(アートン)というタイトルのCDブック。黒田征太郎さんの絵〜イラストレーションに、古謝美佐子の「黒い雨」と、都はるみさんの「心の街」の2曲を収録したCD付き。黒田さんの「PIKADON 」という反戦反核の想いをテーマにしたプロジェクト作品のひとつ。黒田さんとは長いお付き合いをさせて頂いていますし、都はるみさんとのご縁はとても大切なものです。
その本の表紙と、その時の雑誌取材記事(週刊ポスト2005/7/22号)。
残念ながらこの本はもう絶版になっていますが、ネットなんかで購入できるかもしれませんね。
2020.5. 28 

日刊ゲンダイ

前回の「黒い雨」つながりで、古謝美佐子の取材記事を貼り付けました。2019年11月の少し古いインタビューで申し訳ありませんが、、。
私も好きな夕刊タブロイド紙「日刊ゲンダイ」の「私の人生を変えた1曲」というコーナー記事です。

2020.5.19 記

ご無沙汰しております。古謝勘「黒い雨〜アメイジング・グレイス」

皆さん、こんにちは。佐原一哉です。大変ご無沙汰しておりました。ずっと長い間、更新できずにすみません。2020年冬からのcovid-19の世界的な流行で感染拡大防止の緊急事態宣言が発令され、皆さんはそれぞれ大変な日常を送られていることと思います。特に医療関係に方はじめ、育児子育てをされている方、介護をされている方、感染に怯えながらも日常の仕事をせざるを得ない方、またお仕事が無くなってしまわれた方、皆さん本当にお疲れ様です。あるいはcovid-19に感染された方もおられるかもしれません😖😢😭

本日2020年5月15日現在、日本では緊急事態が徐々にの一旦解除される動きはありますが、まだまだこれからも当分、一進一退を続けることになりそうですし、この影響は様々なところで長く長く尾をひくものと思います。

古謝美佐子の公演も2020年3月後半より8月頃まで全て中止か延期となり、ご迷惑をおかけしました。ですので、私も古謝も自宅で静かな自粛隠遁生活を送っており😅ほぼ自宅時間を利用して、久しぶりにこちらを更新しています。

この緊急事態宣言の外出制限下、盟友で文楽人形遣いの名人「勘緑」さんが、4月の緊急事態宣言後から毎日、自宅の屋上などで人形を遣った祈りのパフォーマンスをやり続けておられ、スマホ自撮り動画をFacebookに連日投稿されています。すごいですね。パフォーマンスはもちろん素晴らしく私も連日パワーをもらっています。演目は三番叟などの古典から様々で、古謝美佐子やうないぐみの曲も踊ってもらっていて、嬉しい限りです。

それで、せっかくですので、勘緑さんの了解を得て、この「自粛期間限定、屋上〜ルーフトップパフォーマンス」動画シリーズから古謝関係の作品をこちらで再編集してみましたので、この長い休みの間、古謝の生の歌声は届けられませんが、ご覧頂ければ幸いです。

とりあえず今日5月15日の沖縄本土復帰記念日の第一弾は「黒い雨~ Amazing Grace」です。古謝美佐子と勘緑+木偶者(略称「古謝勘」)は、2006年より既に何十回となくコラボを重ねてきましたが、この古謝勘の中でも白眉とされる2曲です。初演はもう10数年前でしょうか。近年、勘緑氏がフランスのJAPANフェスに参加されることになり「この地球(ほし)に生まれて」と言うタイトルでこの2曲をCD 音源で使用されたいと言うことで、私が繋げてアレンジし、CDとは若干違う「この地球(ほし)に生まれて」ヴァージョンを作りました。今回の動画はその際の音源をそのまま使用しています。英語の字幕も新しく作り直しました。

もちろん、元々は「黒い雨」は戦争〜親子を「アメイジング・グレイス」は自然の神への祈りをテーマにした別々の作品ですが、この勘緑さんの人形パフォーマンスは、一つの「死と再生の物語」としてご覧いただくこともできるかと思います。特にこの時期ですから、、。
皆さんがなるべく近いうちにそれぞれがそれぞれの立場で再生されることを祈願しております。

2020.5.15 記

NHK「名曲アルバム」

このコラム、半年以上お休みしてごめんなさい。
それに加えて、古謝美佐子、うないぐみ関係の情報でなくてまたまたごめんなさい。

私、NHKのTV「名曲アルバム」で北九州市若松の民謡「五平太ばやし」の編曲をしました。放送日時は下記の通り。

編曲といっても大したことはしていませんが、、、
珍しい樽太鼓のプリミティブな響きと民謡歌手小野田浩二さんの歌が素晴らしいです!

2018年
■11月25日(日) 3:55〜4:00
(NHK 総合TV)

■11月26日(月)10:50〜10:55
(NHK Eテレ)

■11月27日(火)05:55〜6:00
(NHK BSプレミアム)

■11月29日(木)13:50〜13:55
(NHK Eテレ)

http://www4.nhk.or.jp/meikyoku/

2018.11.23 記

坂本龍一さん

遅ればせながらですが、2018年4月オンエアのNHK地上波TV「ファミリーヒストリー」は坂本龍一さんの回でした。
 1980年代後半に古謝美佐子が参加した「てぃんさぐの花」などの沖縄民謡を巡って、坂本さんがお父さんと唯一激しい喧嘩になった、というエピソードは前にも聞いており、そのお話はここでも紹介されました。
 生前は頑固なお父さんと殆ど目を合わせて会話をされたことが無い、という坂本さん。しかし、お父さんが内緒で密かに息子の活躍を楽しみにしていた、という話にはさすがに坂本さんの目にも、、。
 この番組に坂本さんが出演されるということも驚きですが、番組中、坂本さんの父方の先祖は福岡県出身だったと聞いてびっくり。それも黒田藩関係だったとか、また母方も長崎出身とか、、で、親近感が湧きました。

写真は、2017年3月に東京で行われた「東北ユースオーケストラコンサート」に「うないぐみ」がゲスト出演させてもらった時の坂本さんとの出番前の一枚。
 このコンサートでは「弥勒世果報」と「てぃんさぐの花」を坂本さんのピアノと東北ユースオーケストラの伴奏で演唱しました。

2018/5/5 記

こんにちは、佐原一哉です

こんにちは。佐原一哉です。
今回、古謝美佐子サイトのリニューアルに際し、また、還暦を迎えて心機一転? 私Blogを始めてみようかということになりました。全くのものぐさで頻繁に更新することはないと思いますが、今後できるだけ私ならではの情報を色々お届けできたら、と思っています。 [2018年4月1日] (このコメントがエイプリルフールにならないように!!)

そして、今回のこのサイト全般を素敵にリニューアルして頂いたのは、古くからの友人で、武蔵大学社会学部メディア社会学科教授の、小田原敏さんです。本当に有難うございました!!!

web上バーチャル対談

佐原一哉 × 小田原敏(webリニューアルを担当)

佐原:今回のリニューアルのポイントは?

小田原:大きく分けてふたつ。ひとつはサイトをご覧になる方のデバイスへの対応。みなさんご存知のとおりネット利用もパソコン中心の時代からスマホに移行しており、現在およそ3割の方はスマホでここを見ています。となるとパソコンを前提に作ってきたサイト表示はスマホではとても小さく見づらい画面になってしまいます。レスポンシブデザインといいますが、訪問してきた方の端末の画面サイズに応じて表示を変える方法が現在は普及しており、これが必要になってきたということです。

 二つ目は、今まではwebページはページ単位で制作し、webサーバーに構築してきたわけですが、これだと更新作業がとても煩雑です。今主流になりつつあるのは、動的ページ生成で、単純に言えば用紙にあたるテンプレートと中身の文字や画像は別々にデータベースとして付箋を付けて管理しておき、web表示のリクエストがあった時はじめてテンプレートと該当する情報を組み立てて来訪者の端末に送ります。webページがひとつのファイルとしては存在せず、要求に応じてテンプレート+データで渡すことから動的と言われています。何が便利かというと、掲載情報だけ追加していけば後は指定したテンプレートを使えばいいので、情報の追加更新作業が格段に楽になります。

 また、テンプレートの集合体のデザインテーマというのもまるごと変更が可能なので、たとえば今のデザインとはまったく異なる雰囲気のテーマをすぐに適用することができ、デザイン変更が楽だということもあります。普段使用しているブラウザを使ったCMS(コンテンツマネジメントシステム)と呼ばれますが、こうしたやり方が現在は主流になりつつあります。追加更新が楽になったら佐原さんがもっと情報を出してくれることを期待しているんですけどね(笑)。

佐原:ご苦労された点は?

小田原:私が素人の域を出ないスキルなので、ほとんどが初体験。いろんな要望を実現するための「カスタマイズ」作業は結構大変でした。プログラミング言語をある程度理解しないといけないので…。デジタルの世界はみなそうですが、裏でこのデータや設定がどういう扱われ方をするのか、ということがぼんやりでも想像つくようになるまでが大変です。ワープロで1行消すのは簡単ですが、テンプレートの1行を消したり他の文字に変えたりするのは結構大変です。

佐原:ご自身で気に入っているところは?

小田原:iPhoneでの表示が格段によくなったことでしょう。これだけでもやった甲斐があります。また、問い合わせフォームやストアのフォームも以前のはジャケット写真付きで綺麗に作ったのですが、今回はDiscographyで内容は見てもらって注文はシンプルにチェックボックスだけでやるので注文処理は早く終わると思います。

佐原:ところで、今回、私、前時代的に遅ればせながらでやっとこのblogを始めたところですが、世間のSNS状況は、Facebook〜Twitter〜Instagramと凄い速さで変化していますね。私は、Facebookは開店休業状態ですしその他はやっていません。やる時間が無いのが一番の理由ですが…。今後は時間を見つけて少しずつできたらと思っています。また古謝美佐子はSNSを全くやってないですし、Facebookは本人のなりすましがいるようで困っています(ファンの皆様、古謝美佐子はFacebookなどは全くやっていませんのでご注意下さい!)。小田原さんのテクノロジーやネットなどに対するご意見を伺いたいと思います。

小田原:私も古謝さんのなりすましもいくつか見ましたし、注意のコメントもなりすまし本人には出しました(笑)。私は講義で「現代のメディア社会は巨大な伝言ゲームだ」と言っています。玉石混淆の情報がたくさん流れる環境なんです。自分が得た情報が元々はどんな話だったのかわからないし、誰かに伝えるにしても自分の理解した文脈で伝えるしかない。実はマスメディア、情報を発信する側も実は伝言ゲームの真ん中あたりにいる場合が多いことも調べればわかります。自衛策は「理屈に合わん話は何かおかしなことがあるから」ぐらいに疑ってかかることです。古謝さんを知っていればなりすましもなんとなくわかると思うのですが…。

 blogは仕事用、趣味用を10年以上やっていますが、本当に興味深い視点や趣味の深さを持っている人がいますね。SNS全般にそうでしょうが、こういう個人に触れることができるのはネットのいい点でしょう。

 ところで、私が研究しているのは主にコミュニケーションテクノロジーと人間社会ですが、ネットは生命体で言う神経と似た働きをします。前世紀末から急激に電子神経網が拡大、浸透し、個人という細胞まで神経が行き渡りました。今では人間集団全体がひとつの巨大生命体を形成しています。問題も多いですが、神経網が進化をやめることはないでしょうね。

 今は情報を引き出すプル型のネット情報が多いですが、今後急速に今までのマスメディアと同じプッシュ型に進むように思います。個人は結局ものぐさで、自分から情報を探したり得たりするより、設定したものを誰かが渡してくれるほうが楽ですから。「新着のコンサート情報をプッシュ通知してくれ」なんていうリクエストも今後増えそうですね。

佐原:なるほど。本当に色々な研究や趣味を持っている人が世の中には沢山いますからびっくりですね。私も時々参考にしています。また「ネットは生命体で言う神経」という表現は確かにその通りと納得しました。神経はものすごい速さで身体を駆け巡りますからね。我々は割とのんびりした沖縄の文化や空気の中にいることが多いので、心臓はゆったりでも神経細胞は素早くという感じで出来ればいきたいと思います。今日は貴重なご意見をありがとうございました。

小田原:いや、面倒な話になってしまってすみませんでした。佐原さんのblog、お忙しいとは思いますが、是非投稿をプッシュして伝えてくださいね(笑)

小田原敏:ネーネーズ時代からの古謝さんのファン。2000年「天架ける橋」完成祝賀パーティーで会いホームページを作りたいという希望を聞き、「古謝さんの声でしあわせをいただいているので、そのお返しに、と。ただ素人なので試作品レベルなら」とスタート。今回は4回目のリニューアル。本業は武蔵大学社会学部メディア社会学科教授。